NHKスペシャル 「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」を見ました。
古代史ファン注目の邪馬台国と卑弥呼をテーマにした番組です。
何か新しい発見や知見があったのかと思いつつ見てましたが。NHKもこんな捏造番組を作るようになったかと呆れました。いや前からそうでしたけど。
これがバラエティ色の強い番組で諸説ある中のひとつとして取り上げるならともかく。真面目な番組のはずのNHKスペシャルでやるような内容ではないですよね。
この番組のどこに疑問をもったのか紹介します。
NHKスペシャル「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」とは
2024年3月17日 日曜日の夜9時に放送された番組。
古代史ファン注目の邪馬台国と卑弥呼をテーマにした番組。
邪馬台国はどこにあったのか?
卑弥呼は何をしていたのか?
という謎を考古学や人骨のDNA解析、古墳のAI調査などをもとに解き明かそうという内容でした。
番組HPには「新事実が続々と!」と煽り文句が付いてます。
本当に新事実が続々と紹介されたのでしょうか?
いいえ、続々と紹介されていたのはたいして目新しくもない学説でした。
卑弥呼が政をしている様子をドラマで再現したのはいいのですけど。図書館らしき場所で会話する寸劇は必要でしょうか?受信料のムダ使いです。その時間を削って本編を増やしてほしいです。
邪馬台国=畿内説が前提で作られている。
御存知の通り邪馬台国の場所は諸説あります。
今のところ畿内説と九州説が有力。歴史学者・考古学者は畿内説を支持する人が多いですが、九州説も根強い支持者がいます。だから今までの邪馬台国論争番組は両方の言い分を紹介することが多かったです。
ところが今回の番組は全面的に邪馬台国畿内説の立場で作っています。
確かに番組で紹介した説が存在するのは確かですが。放送の仕方が一方的過ぎます。邪馬台国が畿内にあるのは当然。みたいな放送の仕方には疑問を感じました。
「箸墓古墳は卑弥呼の墓」なのか?
番組では奈良県にある箸墓古墳が「箸墓古墳は卑弥呼の墓」と紹介されました。
確かにそういう説もあります。
国立歴史民俗博物館(以下、歴博)が行った炭素14年代測定法では、古墳の作られた年代が卑弥呼が没した時期に近いという結果が出ました。そのためマスコミでも箸墓古墳は卑弥呼の墓だと紹介することが多いです。
でも周辺の遺物の調査の等からは3世紀末や4世紀ごろのものという説もあります。だとすれば箸墓古墳はヤマトの初期の王の墓の可能性が高くなります。仮に邪馬台国畿内説が本当だったとしても被葬者は台与(壱与)でしょう。
魏志倭人伝を読めば読むほど箸墓古墳が卑弥呼の墓とは思えないのですよね。
歴博のプロパガンダ?
歴博といえば炭素14年代測定法を使って弥生時代の始まりを500年早め紀元前10世紀頃だと主張している人たち。
歴博は一度発表した結果を間違いだと認めませんから。今後どんな結果が出ても箸墓古墳は卑弥呼の没した時期に近いといい続けるでしょう。税金を投入していますから研究費を出した官僚もひっこみがつきません。そしてマスコミを使ってその情報を流し続けるでしょう。
もしかしてこの番組もそのために作られたのか?と思ったりしますが。
まさかね。
炭素14年代測定法は誤差の大きい測定法です。50~100年くらいのブレはあって当然ですから、それだけを理由に信じるわけにはいきません。
前方後円墳は邪馬台国のシンボルではない
番組の中で「前方後円墳は邪馬台国のシンボル」と語られていました。
いつから前方後円墳が邪馬台国のものになったのでしょうか?
どういう根拠でそういう結論に至ったのでしょうか?
その説明は一切ありません。
「前方後円墳=邪馬台国のシンボル」というのは邪馬台国を畿内に設定して、なおかつ箸墓古墳の築造年代を古く設定したら成り立つ説であって。
仮定に仮定を積み重ねたこじつけ。
前方後円墳を調査した結果から邪馬台国が作ったと証明できたわけではありません。
魏志倭人伝には卑弥呼の墓は「径百余歩」と書いてあります。普通に考えれば円墳でしょう。
百余歩が本当に百余歩だったのか、単に誇張した書き方なのかはわかりません。中国の歴史書は数を一桁ごまかすのは当たり前なので、あんまりあてにならないのですよね。
そういえば韓国系の学者が何かの本で「箸墓古墳は崇神天皇陵より古いのだから前方後円墳はヤマト特有のものではない」と書いていたのを思い出しました。宮内庁が指定した崇神天皇陵を信じているのか?と思いましたが。それはともかく。前方後円墳は韓国にもあるので、「前方後円墳=ヤマト」を認めてしまうと古代朝鮮半島の一部にヤマトの勢力が伸びていた証になります。だから「前方後円墳=ヤマト」を否定したいのでしょうけどね。
今はその本が手元にないのでどこの誰だったかは忘れました。機会があれば調べてみたいです。
なんだか邪馬台国畿内説っていろんな人達の思惑が絡んでそうですね。
狗奴国は前方後方墳を作る東日本の勢力?
西日本で前方後円墳が増えだした時代に東日本には前方後方墳があったことがわかっています。番組ではこれを狗奴国のものだと断言しました。狗奴国とは魏志倭人伝で邪馬台国連合と対立していた国です。
そして、番組では
西日本の前方後円墳勢力=邪馬台国連合
vs
東日本の前方後方墳勢力=狗奴国
という対立があったと説明。
確かに前方後方墳は東日本に多いです。でも中四国や出雲にもあります。しかも前方後方墳は同時期の前方後方墳よりも小さいです。そのため前方後方墳の被葬者よりもランクの低い人の墓という説もあります。
しかもこの説は前方後方墳を邪馬台国の墓と仮定した場合に成り立つ説。
仮に 前方後円墳勢力 vs 前方後方墳勢力 の対立があったとしても。それはヤマトとそれ以外の勢力の対立があった証明にもなります。
前方後方墳勢力=狗奴国説は客観的な証拠が一つもない。仮定に仮定を重ね更に仮定を重ねた無理のある説なのです。
狗奴国は邪馬台国の東ではない
魏志倭人伝には「狗奴国は邪馬台国の南」と書いてます。
なぜ番組ではそのことを紹介ないのでしょうか?
番組ではなんと狗奴国が邪馬台国の東にあると主張しています。
でも魏の使者は北九州にたどり着くまで正確に方角を記録しています。東を南と見誤るようなことはしていません。
近畿説論者の説を採用すると九州に上陸してしばらくすると使者の方向感覚が急に狂って東を南と書いてしまうことになります。太陽の動きを見ればどちらが東か南かくらいわかるでしょう。日本列島には大陸の人の方向感覚を狂わせる変な力が働いているのでしょうか?
学者は都合の良いときだけ「書き間違いだ」とか言って東と南を入れ替えます。でも邪馬台国を畿内に誘致するためのこじつけです。
まだある疑問点
邪馬台国の人々が入れ墨をしていない
あと細かいこと言うと。
魏志倭人伝では邪馬台国の男は黥面=入れ墨をしていると書いてます。でも番組では邪馬台国の人達には入れ墨はなく、敵の狗奴国の方に入れ墨がありました。狗奴国の人も入れ墨をしていたのでしょうけど。邪馬台国の人たちにも入れ墨をするべきではないのでしょうか?なぜ魏志倭人伝に書いてるのに無視するのでしょうか?
畿内説論者はこの部分を意図的に無視しているんですよね。
呉と関係があるのになぜ魏に朝貢した?
番組では卑弥呼は魏と呉の対立を利用して魏に倭王と認めさせた。と紹介されています。
魏志倭人伝を読む限りでは政で中心的立場にあったのは弟。卑弥呼は儀式や祭祀を担当していたようです。魏に朝貢するのを決めたのは弟たちかも知れません。でもまあそのへんはドラマの演出と割り切ることにしましょう。
このころ呉は海から魏を攻める計画があり倭に接近した。近畿からも呉の鏡が見つかっている。と番組では紹介。
それはそうなのでしょう。
そこで卑弥呼は魏に使者を送り呉と魏の外交的緊張を利用して倭王に冊封してもらい乱を治めたというのです。
日本列島に呉と接触した勢力があるのは確かでしょうけど、それが邪馬台国なのかはわかりません。これも邪馬台国を畿内に設定したから可能になった仮定のひとつです。
個人的には魏に朝貢した邪馬台国と、呉から鏡をもらった勢力は別だと思います。
偏った情報の発信源に成り下がるNHK
以上。NHKスペシャル 「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」のおかしなところを紹介しました。
このところ考古学の分野で発見が相次いでいるのは確かです。NHKはそれに便乗して古代史企画を作ったようです。でも番組は最近の発掘の調査は無視。面白おかしい企画にしてしまいました。
しかも一部の学者の説を学会の定説や最新学説であるかのように紹介しています。
NHKでこんな恣意的で偏った情報を流していいのでしょうか?
こんなことをしていてはNHKは自分たちがフェイクニュースの発信源になってしまうということを理解していないのでしょうか?
残念な番組でした。
魏志倭人伝は当時の日本の様子を知ることができる貴重な史料です。でも邪馬台国も卑弥呼も日本の成り立ちを考えるうえでは大した問題ではありません。
いろいろ調べた結果「邪馬台国は畿内にありました。卑弥呼は後のヤマト王権につながる存在でした。」というならそれでもいいです。
でも最初から「邪馬台国は畿内にある」「卑弥呼は日本最初の統一政権の女王だ」と決めてかかってはおかしな結論が出てしまいます。
それより日本の成り立ちを解明するうえでは纏向遺跡ができた経緯や勢力拡大を研究するほうがよほど大切です。
歴史学者や考古学者は邪馬台国の誘致合戦ばかりしないでもっと真面目に歴史を研究してほしいですし、マスコミもはいいかげん目を覚ましてほしいものです。
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